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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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皆が「やや劣る」時代~子どもや若者の体力低下ランニングブームが叫ばれ、われわれランナーがますます元気になる一方、日本人の体力低下が深刻です。
高齢者の低体力や介護問題は早急な対策が望まれますが、子どもや青少年の体力低下は、将来の低体力高齢者の蔓延を予見させ、日本の将来は明るくありません。

実際に子どもや若者の体力低下はどの程度のものでしょうか?
毎年体育の日に、文部科学省から日本人の体力に関して報告されますが、実状ほど深刻なイメージはもたれていません。事実、昨年の報道では、青少年の体力はこれ以上悪化しない「子どもの体力下げ止まりで一安心」、という見解が目立ちました。
しかし、今の青少年は、今の高齢者の青少年期(数十年前)に比べはるかに運動不足であるのは明らかで、数十年後は、極めて低体力な高齢者が多い、超高齢化社会になる可能性は高いのです。
僕の勤める筑波大学では、開学以来30年以上にわたり一般の学生全員を対象とした体力測定を継続しています。
形態的要因、筋力、パワー、瞬発力、巧緻性、柔軟性、筋持久力、そして全身持久力など、体力を構成するほぼ全ての要因を網羅しており、平均値を経年的に並べてみていると、30年の間に、学生の体力が年々低下していることがよくわかります。
図は、筑波大学の1年生の12分間走の変遷です。12分間走とは、12分間で走れる距離から持久力を判定するテストです。30年の間に男女とも200m程度低下しています。
200mの低下は、体力診断の評価がおよそ1段階下がります。例えば、現在平均的な12分間走レベルで全体から見ると「普通の持久力」の学生でも、30年前なら「持久力のやや劣る」学生になってしまいます。すなわち、学生の分布は、やや劣る持久力の学生が大多数を占めるという状況なのです。
この結果は、何も筑波大の学生に限ったことではなく、もっと言えば、大学生などの若者だけの問題でもないでしょう。日本全体の問題として認識する必要があります。さらにその原因を理解し、今後の対策を考えることがその次の問題です。
青少年の体力低下は運動不足が主因ですが、この問題に関わる要因はいくらでもあげられます。一言で言うと、便利で快適な空間・環境・生活を作り出すために、人類は英知を絞りテクノロジーを発展させました。その環境に身をゆだねることが、人類に原始的に備わっていた能力(体力も含む)の衰退につながっているといったら過言でしょうか。
かといって、いまさら、車社会から脱却することが可能でしょうか?携帯電話を手放せますか?コンピューターがなかったらわれわれはパニックになるでしょう。一度便利で快適で楽な環境を手に入れたら、普通の多くの人は、それらを自ら捨てるのは困難です。
だから皆さん走りましょう!とは言いませんが、ジョギングを楽しむわれわれは、スポーツがもたらす恩恵や可能性に気がついている人間です。
ジョギングできる幸せをかみ締めつつ、まず自らの健康を実感し、そしてそれが周囲に伝播し、社会が潤い、健康になることを望んでやみません。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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