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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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ランニングは長生きの秘訣?スポーツマンは長寿か、それとも短命か?
この論議は、すでに20世紀初頭に始まっているのですが、結果は必ずしも一致していません。
その理由として、寿命に影響する因子は多数あり、かつ長期間の追跡調査が必要で、運動だけの影響を検討することが難しいということが挙げられます。さらに、スポーツ種目、生活環境、運動継続年数によっても状況は変わってきます。
とはいえ、喫煙習慣や遺伝的要因など運動以外の生活習慣病危険因子の影響を除いた場合、身体的に活動的な人はそうでない人に比べて寿命が長くなるというのが、近年の一般的な認識です。
ところで、生物学で興味深い仮説があります。
哺乳類の平均心拍数と寿命には一定の関係があり、心臓が一定回数(20~25億回)拍動すると寿命がつきるというものです(本川達雄『ゾウの時間ネズミの時間』)。
ネズミのような小動物は心拍数が非常に高く寿命が短いのに対し、ゾウなど大型の動物は心拍数が低く長寿になります。ヒトの場合も当てはまるのでしょうか?
実際に、スポーツ選手は運動中に心臓を酷使するため短命で、反対に穏やかに生活している人は心拍数が低く長寿である、という報告もあります。
そこで僕の研究室で、一日の平均心拍数の比較調査をしてみました。対象は、日に2回トレーニングしている競技ランナー、週に3~5回走る市民ランナー、日頃運動不足気味の一般健常者です。
その結果、ランナーは運動中(2~3時間)の心拍数が安静時の3~4倍に高まっていたにも関わらず、一日の平均心拍数では運動不足の人よりもかえって低くなりました。これは、ランナーのトレーニング以外の日常生活及び睡眠中の心拍数が、運動不足の人に比べて著しく低いことによるものです。
持久的トレーニングには、心臓・循環系の形態・機能を増強させ、一回の拍動で送り出せる血液量を多くするという効果があります。それに伴い、安静時や同一強度の運動時の心拍数が低くなるのです。
反対に運動不足の弊害の一つに、心臓の萎縮及び機能低下があり、それらを反映して心拍数は高くなります。心拍数の増加は心臓の負荷が増大していることを意味します。
運動不足の人は、睡眠を含む日常生活全般で心臓への負荷がランナーよりも高く、結果として一日の心臓の負担が大きくなることは十分に考えられます。
「心臓に寿命がある」という仮説が正しければ、心拍数の高低が寿命に影響することになります。
図は心臓寿命の回数を25億回と仮定し、平均心拍数から寿命を推定した模式図です。現在の日本人の平均寿命より短いなど問題点はありますが、概念としてとらえて下さい。
これによると、運動不足の人の余命はランナーに比べて5~10年以上短いと予測されます。
同時にこの図は、適当な運動習慣によって心機能が亢進し心拍数の低下が起これば、寿命が延びる可能性も示しています(青→赤の方向)。
反対にランナーでも、その習慣をやめてしまえば徐々に心拍数の増加が起こり、余命が短縮されます(赤→青の方向)。
それでは自分自身の寿命を推定してみましょう。1日の平均心拍数の代わりに座位安静時の心拍数を測り、それに10拍加えた数値を用いて、図にあてはめてみます。およそ何年になりますか?
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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