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鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

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1時間走れればフルマラソンは完走できる

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第6章 身も心もリフレッシュ!からだをストレッチング&ケア

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「30kmの壁」のメカニズム ~マラソンのエネルギー源と消費量「30kmの壁」のメカニズム ~マラソンのエネルギー源と消費量

先のコラムでも紹介した福士選手の失速を、他人事ではないと感じた人も多いことでしょう。

マラソン後半に大きくペースダウンしてしまう現象は「30kmの壁」「35kmの壁」と呼ばれています。ランナーの間でよく知られたこの「エネルギー切れ」現象はなぜ起こるのでしょうか?

筋収縮時のエネルギー

ジョギング

運動は筋の収縮・弛緩の連動によって起こります。腕を動かすような単純な運動から、より複雑で全身的な運動になるほど、活動する筋群は多くなります。

ある運動時に必要なエネルギー量は、活動している一つ一つの筋が収縮する際に必要なエネルギーの総量として評価できます。

一般にエネルギー源と言うと、糖質や脂質を思い浮かべる人が多いと思います。実際には、筋収縮に直接利用されるエネルギーはATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる物質です。このATPがリン酸基を一つ放す(分解)たびに放出するエネルギーが筋収縮の源になります。

ところが、ATPは筋中にごく少量しか蓄えられていません。そのため、筋収縮に必要なエネルギー源(ATP)を絶やさないためには、分解と同時に再合成する必要があります。

この「分解→再合成→分解」のサイクルを繰り返すことによって、エネルギーを供給し続ける、すなわち運動を継続し続けることが可能になります。このとき、ATPの再合成に使われるエネルギー源として糖質などが利用されるのです。

体内に蓄えている糖質の量

糖質は、肝臓や筋肉にグルコース、グリコーゲンと言う形で蓄えられていますが、その量は体重60kgの男性でおよそ300~400g程度に過ぎません。

これをエネルギーに換算すると約1600kcalに相当します。

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マラソンに必要なエネルギー量

運動時に必要なエネルギー量は、運動の強度、時間、動かす身体部位の大きさ(重さ)によって推定できます。

マラソンの場合、走る速度が速ければ、単位時間に要するエネルギーは大きいものの、ゴールタイムは短くなります。

反対に、ゆっくり走る人は、単位時間のエネルギー量は小さいものの、より長い時間走り続ける必要があります。

そのため、同じ42.195kmを走る場合、速い人も遅い人も、体重が同じであれば必要なエネルギー量はほぼ同程度になります。この関係から、体重1kgを1km運ぶためのエネルギー量を求めると、その値はおよそ1kcalに相当します。

したがって、60kgの人がフルマラソンを走ると、2540kcal(60kg×42.195km)程度のエネルギーが必要になります。

糖質だけでは絶対的に足りない

先に述べたように、糖質の備蓄量は1600kcal程度です。したがって、「30kmの壁」を乗り越え、フルマラソンを走りきるためには、糖質だけでは絶対的にエネルギーが不足するのです。

そこで、ランナーはなるべく糖の利用を節約し、もう一つのエネルギー源である脂肪を有効に使って走ることが求められるのです。

次回はマラソンにおける糖の枯渇と脂質代謝の貢献について紹介します。

(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)

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