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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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「超回復」とオーバートレーニング症候群「オーバートレーニング症候群」という言葉をご存知でしょうか?
スポーツ報道などで、お聞きしたことがあるかもしれません。
一生懸命練習しているのに、なかなか記録が更新されない。むしろ、身体が重く感じる・・・。そんな悩みに思い当たることはないでしょうか。
トップアスリートの世界の話で自分には関係ない、と考えていたら大間違いです。
図はトレーニングによる疲労と回復の関係を模式化したものです。
トレーニングによって身体に負荷をかけると、一時的にせよ、身体的、精神的に疲労します。その疲労が回復する過程で、一時的に状態(体調など)が初期レベルを上回ることがあり、これを「超回復」と呼びます。この超回復がトレーニング効果を生み出す鍵となります。
超回復には、酸素摂取能の向上、筋肥大などの生理的な適応、神経系の機能改善、心理的な向上などが含まれます。
トレーニング負荷が弱すぎると、疲労も小さい代わりに超回復も小さくなります。一方、負荷が強すぎると、超回復が得られないこともあります。
例えば、トレーニングによって筋の細胞膜は損傷し、筋肉痛などの形で発現します。
しかし、適切な回復期間を取れば、損傷する前よりも構造的に強い筋に回復されます。筋収縮に関わる運動神経も増え、機能的にも改善されるでしょう。
図は、トレーニングの頻度と超回復の関係を模式化したものです。
①はトレーニングと回復期間が適切な場合で、超回復が徐々に高まってトレーニング効果が得られます。
②はトレーニング頻度が少なく、回復が長すぎる例です。休みすぎて超回復は消失し、トレーニング効果は得られません。
③は頻度が高すぎて、回復期間が不十分なため、超回復が得られず、疲労が増していく状況を説明しています。

長期間にわたり、③のようなトレーニングと回復の関係を続けていると、疲労はますます増蓄し、ちょっとやそっと休んだぐらいでは回復しないほど、身体が疲弊してしまうことがあります。これが「オーバートレーニング」の兆候です。状況が悪いと半年から数年、体調が戻らない人もいます。
最近、疲れが抜けきらないと感じ、メリハリのない走り込みをしている人は要注意です。マラソントレーニングは「過負荷」をかけることが重要ですが、身体の回復を見極めながらトレーニングを継続することが、結果的にはより大きなトレーニング効果をもたらします。
その意味で、回復の見極めはトレーニング以上に重要といえるかもしれません。距離走など、普段より強いトレーニングの後、数日間筋肉痛が残ることがあると思います。このとき、無理にトレーニングをして、筋肉痛が増すようであれば、十分回復されていないと判断できます。
もっと単純に、「走りたい」と欲求しているかどうか身体の声を聞くことも大切です。長期間の走り込みでも同様です。日増しに疲労がたまってくるでしょう。
しかし、走りこみの期間が終わったあと、回復を主眼においてトレーニングすることが、怪我やオーバートレーニングなどを招かずトレーニングを継続できる肝になります。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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