楽しく走ってステップアップ

今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学体育系(体育センター)教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

走るなら食べよう!~体は必ず変わります~

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トレーニングの伝承 ~ランニング学会備忘録

第28回ランニング学会が、2016年3月12~13日に環太平洋大学(岡山)で行われました。「マラソンニッポン復活に向けて~長距離走トレーニング再考~」というテーマで、近年よく取り上げられている「高強度トレーニング」を中心に、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた課題(女性アスリート、ドーピング、障がい者スポーツ)など盛りだくさんの内容でした。

伝統的トレーニングと高強度トレーニング

ジョギング

高強度トレーニングに関するシンポジウムでは、喜多秀喜先生(流通経済大)、櫛部静二先生(城西大)、渡辺康幸氏(住友電工)から話題提供がありました。3名とも現役時代は日本を代表するトップランナーであり、指導者としても豊富な経歴を持っています。

早稲田大出身の櫛部、渡辺両氏は、現在、大学・実業団で後進を指導する新進気鋭の指導者です。それぞれが、現役時代に行なってきたトレーニング(走り込みを重視)を省みながら、現在は指導者として、高強度トレーニングを重視して成果を上げている事例について紹介してくれました。特に、最大酸素摂取量の出現速度を超えるスピード(1500m競走以上)でのスプリントトレーニングを取り入れる重要性を指摘されていました。同時に櫛部先生からは、初マラソンに臨む学生に対し、このコラムでも紹介した「高強度走+持続走」によって25㎞以下に抑えた距離走だけで2時間14分台という記録に成功した事例報告がありました。

お二人とも、自分が学生時代に戻って今のトレーニングをやり直せたら、とてつもない記録で走れたはず、と強調し会場は大いに盛り上がりました。

後半を読む

強かった時代のトレーニング(走り込みの意味)

一方、喜多先生は、ご自身が行ってきたトレーニング内容を詳細に語って下さいました。会場をびっくりさせたのが、毎週末に行っていたという超長距離(60~80㎞)走です。この部分だけを聞くと、伝統的な「走り込み重視」という印象なのですが、話が進むにつれ、我々がステレオタイプに想像する「走りこみ」とは異なるトレーニングであった、と感じました。

ちょうどその日の朝、喜多先生と二人でジョグをして、さらに詳しい話を聞いていたのですが、週末の距離走はとことんゆっくりで、今でいうマラニックのように肉体的には疲れても精神的には自由で開放感あふれる練習だったようです。さらに、この超長距離以外の日は、最大酸素摂取量を超える速度の練習を多く取り入れて、あくまでもトラック競技の記録向上を目指していたそうです。

要するにLT強度(マラソン)でのペース走はあまりせず、それよりも速いペース(1500~5000m)を中心に、長く走るときはとにかくゆっくり走っていたようです。走行距離は優に1000㎞/月は超えていたと思われますが、いわゆる「距離を走る」トレーニングとは異なる、というのが率直な感想です。

世界に通用するアスリートの育成のために

喜多先生は、今の選手は距離走の速度が速すぎるから怪我をしたり、長い距離を走れないのではないか、と話していました。レースペースより遅いペース走が多いのもよくないのかもしれません。ペース走は基礎的な持久力だけではなく、ペース感覚なども養われるので、競技者に限らず市民ランナーでも多用するトレーニングです。駅伝チームのように短期間に多くの選手を育成するには、効果的かもしれません。しかし、「超」トップランナーを育てるには限界があるのかもしれません。聞いていた櫛部、渡辺両氏にすら、「無理!」と言わしめた練習ができたからこそ、強くなれたのだとは思いますが、喜多先生の「今の選手はペースに縛られすぎだ」という言葉も心に残りました。

伝統的な「走り込み」トレーニングの実態をもう少し詳しく調べる必要性を感じた学会大会でした。

(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)

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