楽しく走ってステップアップ

今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学体育系(体育センター)教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

走るなら食べよう!~体は必ず変わります~

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電気のパワーで楽して筋トレ?

ジョギング

ステップアップのためには筋力トレーニングを取り入れるべきか?と考えているランナーは少なくないと思います。私自身も腹筋や背筋など体幹の強化を課題に挙げてはいるのですが、なかなか続けることができず挫折を繰り返しています。

そんな時に目にしたのが、装着するだけで筋力トレーニングの効果があるという器具です。これは電気的筋肉刺激(EMS:Electrical Muscle Stimulation)と言われるものです。筋肉に微弱な電気を流して収縮させ、自ら身体を動かすことなく運動の効果を得る器具です。

もともとEMSは重度の肥満や脊椎損傷など運動することが難しい人に対し、電気刺激によって運動の効果を与える医療機器として使われていました。それが自宅で簡単に使える商品として開発され、一般の人でも購入できるようになりました。これらの商品は装着するだけで筋肉を鍛えられると謳っているものもあり、皆さんの中にも補助トレーニングとして有効ではないかと考えている人がいるかもしれません。

そこで今回はEMSがランナーのトレーニングとして有効なのか、2つの研究データから考えたいと思います。

一過性の効果について

ひとつ目は一過性の使用効果について、9名の方(男性3名、女性6名)を対象に検討した研究です。

対象者の方の平均年齢は44歳で、いずれもかなりの肥満体型でした(肥満度を表すBMIの平均は41.5)。実験はEMSを用いて太ももの前・後部に4-5Hzの電気刺激を1時間与え続けた場合と、トレッドミルを用いて様々な速度のウォーキングをした場合の酸素摂取量を比較しました。

その結果、EMSを用いて電気刺激を与えている際の酸素摂取量は、ややゆっくりのウォーキング(時速3km)と同等であることが確認されました。これは対象者の方たちにとっての最強度の半分程度の運動です(最大酸素摂取量の約50%に相当)。

ウォーキングとは異なり膝などの関節に負担がかからないことから、肥満者にとって有効な運動方法の一つであると述べられています。

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継続使用の効果について

ふたつ目は継続的な使用効果について、普段ほとんど運動をしない15名(男性10名、女性5名)を対象に検討した研究です。

対象者の方の年齢は25-72歳(平均48歳)と幅広く、いずれも日本の基準では「肥満」に該当する体型でした(BMIの平均は27.1)。対象者の半数は「6週間の介入(EMS使用)→2週間介入なし→6週間の介入(EMS使用せず普段通りの生活)」の計14週間を過ごし、残りの半数はEMS使用/不使用の順番を反対にして14週間を過ごしました。

2度の介入期間(計12週間)では日々の活動を記録し、EMS以外の活動量が同程度であったことを確認しました。EMSを使用する6週間は太ももの前・後部のほか臀部や膝の裏に装着し、週に5回、1回につき1時間の電気刺激をしました。電気刺激の強さに関する詳細は不明ですが、EMS使用中の心拍数を基準に各対象者の強さを決定したようです。

以上の介入をした結果、EMSの使用によって最大酸素摂取量が10.9%、大腿四頭筋の筋力が26.9%上昇したことが示されており、普段ほとんど運動しない人の体力および筋力の向上に役立ったと述べられています。

急がば回れ

これら2つの研究結果からは、EMSを使用すると安静時よりもカロリーを消費すること、体力および筋力向上効果がうかがえました。

ただし、紹介した研究は低体力者や肥満者など極端な対象に行ったもので、人並み以上の体力・筋力であるランナーがさらに上を目指すためにトレーニングとして有効かどうかは不明です。また、電気刺激の周波数や使用時間によっても効果に差があると指摘されています。そのため今回取り上げた研究の結果から、市販のEMSがランナーの補助トレーニングとして有効だと単純には考えられない点に注意しなければいけません。

(文:岩山海渡 イラスト:後藤徳一郎)

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