楽しく走ってステップアップ

今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学体育系(体育センター)教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

走るなら食べよう!~体は必ず変わります~

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失速の男女差 データから考えるペース配分

マラソンはよく「理性のスポーツ」などと言われることがあります。序盤は快調に走っていても、それがオーバーペースであれば終盤に大きく失速してしまいます。反対に終盤の失速を恐れて必要以上にペースを抑えてしまうと目標の記録には届きません。マラソンでは自分に合ったぎりぎりのペースを見極め、感情や本能を抑えこむことが求められます。

ペース配分を間違え、30kmを過ぎて失速または歩いてしまい悔しい想いをしたランナーは少なくないと思いますが、そうしたペース配分の話題でよく耳にするのは「女性は男性よりペース配分が上手い」ということです。それは“真実”なのか“気のせい”なのかをデータから検討した研究がアメリカで発表されました(Med Sci Sport Exer. 47:607,2015)。今回はその内容をご紹介したいと思います。

ペース維持と失速の定義

2011年にアメリカで開催されたマラソン大会のうち、完走者数が1000人を超えている14の大会を取り上げました。中間点とゴールタイムが確認できる記録のうち、同一人物が複数の大会に出ていた場合はもっとも良い記録のみを採用し、合計91,929人の記録を対象としました。そのうち女性の比率は41.5%でした。

ジョギング

走力別に比較するため、男性完走者を「3時間以内」から30分毎に区切り「5時間以上」までの6グループに分けました。女性の分け方は男性と少し異なります。女性は男性と同じトレーニングをしても運動パフォーマンスや最大酸素摂取量が約12%低いという研究があるため、相対的なレベルを統一するために男性のタイムに12%加え、「3時間22分以内」から約30分毎に区切り「5時間36分以上」までの6グループに分けました。

ペース配分を評価する基準として、前半ハーフに比べて後半ハーフの記録低下が10%以内である人はペースを「維持した」と判定し、記録低下が30%以上である人を「失速した」と判定しました。例として、前半ハーフが2時間00分だった場合、後半ハーフが2時間11分以内であればペースを「維持した」と判定し、2時間36分以上であれば「失速した」と判定します。以上の基準で男性と女性を比較しました。

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ペース維持能力は女性のほうが高い

ジョギング

結果の一覧を表に示します。まず、男女ともにゴールタイムが速いグループの方がペースを維持した人の割合が多く、失速した人の割合が少ないという傾向がありました。

性別で比較すると6つのグループすべてで女性の方が男性よりもペースを維持した人の割合が1.3~1.6倍ほど多く、全体で比べるとペースを維持した人の割合は男性よりも女性の方が1.46倍も多いという結果でした。

また、30%以上ペースダウンして「失速した」と判定された人の割合は6つのグループすべてで女性は男性の3分の1程度であり、全体で比べると「失速した」と判定された女性の割合は男性の0.36倍でしかありませんでした。

この他、年齢やマラソン経験の影響を除いたより詳細な比較によっても、女性の方が男性より「失速しない」という結果でした。

男性には勝負師が多い?

なぜ男性は失速し、女性はペースを守れるのでしょうか。確かなことは明らかになっていませんが、身体的・心理的な側面からいくつか考えが述べられていました。例えば生理学的な視点から、男性は女性よりも運動時にグリコーゲンを使う割合が多いという点です。同じくらいの実力・体格の男女が同じペースで走ると、男性は女性よりもグリコーゲン枯渇が早く、いわゆるマラソン後半の「壁」にぶつかりやすいと言われています。

また、アンケート用紙による意識調査の結果から男性は「競技志向」が強い傾向にあることが知られており、それも影響しているかもしれません。つまり記録を狙うためにオーバーペースになり、その結果「失速」してしまう人の割合が増えているとの考えです。

この研究ではコースの起伏や天候、途中の補給など考慮しきれていない要因が多数あるため、あくまでも「前後半のペース変化」という一つの視点から見た結果です。ですから「どちらが優れているか」という単純な話ではありません。余談ですが、筑波大学で開講されている「つくばマラソン」を走るための授業でも、歩いてしまうのは男子学生の方が多いのが事実です。受講生の多くはマラソン経験が非常に浅いため、少なくとも初心者に関しては女性のペース配分を参考にした方が上手く走れるのではないかと感じています。

(文:岩山海渡 イラスト:後藤徳一郎)

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