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今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学体育系(体育センター)教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

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暑い日はゆっくりペースでも効果あり 暑い日はゆっくりペースでも効果あり

早いもので今年も折り返しをすぎ、暑い夏がもう目の前に迫ってきました。ランナーにとっては、ちょっと走っただけでも汗だくになってしまう厳しい季節と言えます。暑い中で走るのは精神的にも肉体的にも負担が大きく、なかなかやる気が出ないという人がいるのではないでしょうか。しかしせっかく身についたランニングの習慣を失わないためにも、または秋シーズンを迎えたときにしっかりと走るためにも、暑いからといってクーラーの効いた部屋でゴロゴロしているわけにはいきません。そこで今回は「暑い時期ならではのトレーニング効果」に関する研究を紹介し、夏もしっかり走ろうという気持ちを後押ししたいと思います。

暑い時は運動能力が低下する

ジョギング

暑いと走るのが辛く感じますが、実際に気温が高い環境では涼しい環境の時と比べて身体能力は低下します。同じ運動をしても気温が高い時の方が心拍数は高くなりますし、グリコーゲンの減少も早くなります。また、深部体温(身体の中心部の体温)の上昇が速くなることも早期に疲労困憊になる要因の一つです。さらに脱水による身体能力への影響も気温によって異なり、涼しい環境では大きな問題とならない脱水量であっても、気温が高い環境では身体能力の低下が起こることが示されています。

このように「暑さ」という条件が加わるだけで身体能力は大きく低下してしまうことがわかっています。夏場に高強度のトレーニングを実施しようと思っても身体がついてこないのは、決して気合いが足りないからではなく、ある程度は仕方のない問題と言えます。最大酸素摂取量の向上など身体能力の改善には高強度トレーニングが必須ですが、それでは夏のトレーニングで身体能力を向上させることはできないのでしょうか。

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暑い環境でのトレーニング研究

十分にトレーニングを積んだ自転車選手を対象に、10日間の自転車トレーニングを2つの条件で行った研究が発表されています。その2条件とは、一方が「気温40℃」の環境でトレーニングを行う条件で、もう一方は「気温13℃」の環境でトレーニングを行う条件でした。トレーニングは毎日行い、最大酸素摂取量の50%(ランナーであればジョギングに相当する比較的軽い運動)に相当する強度で、45分間を2セット(セット間は10分)実施しました。

日頃からトレーニングを積んでいる選手が対象であったため、最大酸素摂取量の50%という強度は身体能力を向上させるには不十分と考えられる強度設定であり、涼しい13℃の環境でトレーニングを行った群では予想通り効果がありませんでした。しかし一方で、40℃の環境でトレーニングを行った群では最大酸素摂取量が約5%向上しました。決して高強度とは言えない「最大酸素摂取量の50%に相当する強度」でのトレーニングしか行っていないにもかかわらず、「暑い」という特殊な環境で実施したことが身体能力の向上につながったと考えられます。

こうした気温によるトレーニング効果の違いは、運動に「暑さ」という環境条件が加わったことによって「心臓の機能向上」や「血液量の増加」が引き起こされたためと考えられていますが、明確なことはわかっていないようです。それでも、できる範囲で夏場のトレーニングを続けることが大事なのだと思わせてくれる結果ではないでしょうか。

熱中症には十分注意

この研究結果はあくまでも可能性を示したにすぎず、「暑くてもとにかく走る」ことを推奨しているわけではありません。実際の外気温が40℃に達することはごく稀ですが、それでも日本の夏は十分に暑いです。むしろ夏の炎天下で走ることは、熱中症などのリスクを考えると避けるべきであることには変わりません。

それでもこの研究結果から、暑いからといってランニングから遠ざかるのではなく、できる範囲で継続することが秋のシーズンにつながると期待できます。同時に、暑い夏は涼しい秋冬に比べて軽い強度(ゆっくりのペース)でも十分に効果があると言えるのではないでしょうか。これを読まれた方々が「夏もがんばろう!」という気持ちに、少しでもなれたなら幸いです。

(文:岩山海渡 イラスト:後藤徳一郎)

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