楽しく走ってステップアップ

今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

走るなら食べよう!~体は必ず変わります~

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クロストレーニングでステップアップ⑦ 事例その2 汗に着目 秋から春のレース

前回は、障害を乗り越えて大幅な自己ベスト更新を成し遂げた学生中距離ランナーの事例を紹介しました。今回は、マラソンでの自己記録更新を目指した3名の市民ランナーの事例をそれぞれ簡単に紹介し、そこから導き出されたメリットや導入にあたって留意すべき点をまとめます。

2時間台でのマラソン完走を目指すAさんの例

春のマラソンで3時間44分の自己記録をマークし、秋のマラソンでの更なる記録更新を目論んだAさんは、週に2回実験室に来室し、自転車でのインターバル・トレーニングに励みました。

その結果、冬のマラソンでは、自己記録を大幅に更新する3時間6分をマーク、「トイレの順番待ちさえなければ・・・」と、近い将来のサブスリー達成をも期待させる素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

なお、Aさんは自転車トレーニングの主観的な効果として「弾んで走れるようになった」、「後半も粘れる」などの内省を報告して下さいました。前者は、自転車トレーニングによる筋力向上をうかがわせる内容であり、おそらくこれを反映したのでしょう、ランニングエコノミーにも改善が見られました。また、後者は、他の自転車トレーニング実践者からも共通して聞かれたものであり、筆者(吉岡)自身も特にマラソンの終盤で体感しています。

その後、ロードバイクを購入し、自転車レースにも参加するようになったAさん、そろそろサブスリーランナーの仲間入りを果たす時期ではないかと期待しています。

極めて少ない走行距離で好記録を達成した筆者の例

次に、2008年の東京マラソンに向けた2か月間のトレーニングでの筆者のケースをご紹介しましょう。

この期間に片道6.5キロの自転車通勤と週に1~2回の実験室でのインターバル・トレーニングを導入することで、これまで週あたり50㎞程度だった走行距離を約18㎞まで減らしました

一度に走った最長距離も18㎞程度であり、多少の不安を抱えてのレースでしたが、終盤に失速することもなく2時間46分と、自己ベストから大きく遅れることなく完走することができました。

このトレーニングで興味深かったのは、自転車でのトレーニング量をランニングの走行距離に換算すると、これまでランニングだけで行っていた走行距離(50㎞/週)とほぼ同程度と推定されたことです。言い換えれば、ランニングとは異なる運動であっても、同様の筋を動員し、かつ同等のトレーニング量を確保できれば、同等のパフォーマンスを発揮することが可能であることが分かったのです。

しかし、良いことばかりではありませんでした。Aさんの結果に反して、ランニングエコノミーが悪化してしまったのです。総トレーニング量の半分以上を自転車でまかなった今回のトレーニングプログラムの場合、筋力の増大によるランニングエコノミーの改善効果よりも、自転車での持続的な(じわ~っとした)筋活動が、ランニングにおける着地時の筋活動に転移したことによる負の効果の方が大きくなってしまったのでしょう。

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オーバートレーニング症候群に陥ったBさんの例

サブスリーランナーであるBさんは、更なる記録向上、2時間40分台を目標に自転車トレーニングを導入しました。

Bさんの弱点は、必要だと分かっていながら高強度のトレーニングを行えないことであり、この弱点を補うために高強度の自転車トレーニングを導入しようと考えました。

しかし、経験が浅く、走行距離も短かった(週当たり約17㎞)Aさんとは違い、ベテランランナーであるBさんは、元々の走行距離(週あたり約100㎞)を減らすことへの抵抗が大きく、自転車トレーニング導入後もランニングでのトレーニング量を減らすことができませんでした

その結果、総トレーニング量は増えたにもかかわらず、有酸素性能力が低下し、自転車トレーニングを導入した後の最初のマラソンは、久々に3時間以上かかる失敗レースとなってしまいました。

クロストレーニングは夢のトレーニング法ではない

ジョギング

このように、自転車でのトレーニングは、簡単に成果をあげられる夢のトレーニング法ではありません。その他のトレーニング法と同様、メリットとデメリットあるいは留意すべき点をおさえた上で、量、強度そして頻度を適切に組み合わせることによって初めて高い効果を得られるのです。

以下に、3名の事例から導き出されたメリットとデメリットをまとめますので、トレーニングに導入する際の参考にしてみて下さい。

メリット
1) 強度の高いトレーニングを無理なく行えること
2) 筋力を高め、ランニングエコノミーを改善する可能性があること
3) トレーニング量が同等であれば、同等のパフォーマンスが得られること(=ケガのリスクを抑えてパフォーマンスアップが図れること)
デメリット
1) ランニングが少なすぎるとランニングエコノミーを悪化させる可能性があること
2) 筋痛や関節痛が生じにくいため、過度なトレーニングに陥りやすいこと

クロストレーニングに関するお話は以上で終了です。次回からは、世界中の研究成果から皆さんのランニングライフに役立つ話題を厳選してお伝えする予定です。

(文:吉岡利貢 イラスト:後藤徳一郎)

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