jognote 楽しく走ってステップアップ講座
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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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ランニング・エコノミーで走力アップ!先日(11/22)、大学のマラソン授業の最終目標である「つくばマラソン」が無事終了しました。今年も100名を超す学生達が完走を果たし、喜びの涙を流しました。
そんな中、制限時間(6時間)を遥かにオーバーして、7時間20分程かけて帰ってきた学生がいました。必ず戻って来い、というスタート前の僕のハッパ、共に完走しようという仲間との約束、そして何より彼自身の意地が走り続けさせた要因でしょう。
脚を引きずる姿はあまりにも痛々しく、無事戻ってきたことに安堵しつつも、何が何でも完走するという指導を、結果的にしてしまったことに戸惑いを覚えました。
1995年9月に福岡でユニバーシアード・マラソン大会が開かれました。残暑が厳しい上に、90%以上に達した当日の湿度が地獄のマラソンを生みました。
39kmまで独走していた女子選手が意識朦朧となり、まっすぐに走れない状況に陥ったのです。これは深刻な熱中症で、即刻やめさせるべき状況で、本人の気力で持ち直せるものではありませんでした。
しかし、沿道の観客も、そしてアナウンサーや解説者までも、「制止してやめさせる」という行動とは正反対に、「応援する」立場をとってしまいました。TV観戦していた僕は、その時の光景を今でも思い出します。
つくばマラソンの1週間前、やはり茨城県で開催されたハーフマラソン大会でレース中に倒れた方がいました。本人自身のコンディション不良かもしれませんし、寒かった前日までとはうってかわった好天で、気温が上がったことが要因かもしれません。
倒れた方を見つけた僕の友人たちは、救急車が到着するまでの間、レースを中断し付き添いました。結果的に自分たちのレースは時間オーバーとなり、大会関係車両でゴールに戻ったそうです。この話を聞き、その迷いない判断と行動力に感服し、それを自然に実行できる仲間を誇らしく思いました。
走る人が増えれば、その分コンディションがよくない人の割合も増えることを、われわれ指導者もレース主催者も肝に銘じる必要があるのでしょう。
しかし、何よりランナー自身の判断が重要です。ランナーは、伝令の使命達成後に絶命したとされるマラトンの兵士になってはいけません。
中には、そのレースに人生の全てをかける意気込みで挑む方もいるかもしれません。しかし、マラソンにも、そして人生にも、次があるのです。その時はそう思えないかもしれませんが、その気になればチャンスは何度でも作れるのです。
何が何でも、とそのレースに固執し過ぎてしまっては、自分自身を苦しめ辛いだけです。途中でやめる勇気、スタートしない勇気を持って欲しいと思います。それと同時に、見守る側に立ったとき、「やめる勇気を称える目」や、ときには「冷静な抑止力」を持ち合わせたいと思います。
やめることは、ボロボロになって無理やりに完走することよりも、時には苦しく辛い決断です。だからこそ、そこから多くを学び、出直すことでより広く深いランニングの世界を開眼することがあると僕は信じます。
ここに、勝利と記録とは根本的に異なる市民マラソンの意義と価値があるように思います。健康でチャレンジできる自分を、その同行者や応援してくれる仲間と共に祝い、楽しむのが市民マラソンの重要な価値の一つではないでしょうか。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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