jognote 楽しく走ってステップアップ講座
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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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心拍数とオーバーペースの見極めエネルギーの節約が欠かせないフルマラソンでは、ペース配分はもっとも重要な戦略の一つといえます。
しかし、適切なペースを判断するのは意外に難しいもので、目標記録に固執してしまい、結果としてオーバーペースで失敗したという経験は、ランナーであれば一つや二つあるものです。

僕はフルマラソンにかかわらず、レース中に心拍計を装着し、心拍数をモニターしながら走ります。心拍数を一つの目安にして、主観的な感覚と照らし合わせながらペースを判断しているのです。
そこで、ほぼ正確に心拍数を計測できた僕自身のマラソン(表の13レース)について、レース展開(前後半のペース変化)と心拍数の関係を紹介します。
ただし、例数が少ないため、統計的な判断はできません。また、対象レースが1995年から2008年までの広範にわたるため、年齢、走力、レース時の環境(気温など)などが異なります。したがって、経験的な話として読み進めてください。
| 大会 | 年齢 | ペース [/km] | 心拍数 [拍/分] | レース展開 | |||
| 前半 | 後半 | 前半 | 後半 | 平均 | |||
| つくば(1995) | 32 | 3.52 | 3.50 | 170.3 | 177.3 | 175.3 | イーブン |
| つくば(1996) | 33 | 3.46 | 3.43 | 177.0 | 182.3 | 179.1 | イーブン |
| 佐倉(1997) | 33 | 3.38 | 3.43 | 170.3 | 176.7 | 173.0 | イーブン |
| つくば(1997) | 34 | 3.34 | 4.40 | 175.7 | 149.7 | 161.1 | 失速 |
| 別大(1998) | 34 | 3.32 | 3.31 | 173.0 | 176.7 | 173.6 | イーブン |
| 東京(1999) | 35 | 3.26 | 4.19 | 176.8 | 155.6 | 170.3 | 失速 |
| つくば(1999) | 36 | 3.39 | 3.34 | 174.8 | 180.3 | 176.8 | 後半 |
| つくば(2001) | 38 | 3.59 | 4.06 | 167.3 | 172.8 | 171.7 | イーブン |
| ホノルル(2006) | 43 | 4.28 | 4.19 | 165.3 | 182.0 | 176.0 | 後半 |
| 東京(2007) | 43 | 4.07 | 4.18 | 175.3 | 170.0 | 173.0 | 前半 |
| つくば(2007) | 44 | 3.57 | 4.15 | 171.7 | 175.3 | 174.4 | 前半 |
| ホノルル(2007) | 44 | 4.11 | 4.15 | 170.0 | 179.3 | 175.7 | イーブン |
| 東京(2008) | 44 | 4.06 | 4.21 | 171.3 | 172.0 | 173.2 | 前半 |
スタート~15kmを前半、30km以降を後半として計算しました。また、スタート~ゴールの平均心拍数も求めました。
まず注目して欲しいのは、年々走力が低下しペースが遅くなっているにも関わらず、前半の心拍数に大差がないことです。1km毎を、平均3分32秒で走った1998年別大と、4分06秒で走った2008年東京で、心拍数はほぼ同じなのです。
僕の場合、加齢に伴う最高心拍数の低下がほとんどないため、相対的には10年前とほぼ同程度の負荷がかかっていることになります。このように、トレーニング状況、走力の差、年齢、環境(気温など)などによってペースが変わるのに対して、心拍数という生体の負担度には大きな差がないのは非常に興味深いことです。
レースを、速度の変化から前半型(後半4%以上の低下)、後半型(後半2%以上の増加)、イーブンペース型(前半型と後半型の間)、失速型(後半10%以上の低下)に分類してみました。
その結果、失速型や前半型のように前半のペースが相対的に速いレースほど、その時の心拍数が高く、相対負荷が増していることがわかります。
一方、平均心拍数は、レース全体の負担度と考えることができます。これをみると、前半の心拍数との関係と反対の結果になりました。
このことは、前半やや押さえて(相対的にやや遅く)走った後半型やイーブン型の方が、結果的にはトータルで強い負荷をかけられた、すなわちパフォーマンスが高かったことを表しています。
したがって僕の場合、レース中の主観的な感覚にあわせて、心拍数を照らし合わせて判断すれば、前半のオーバーペースを防げることになります。
しかし、実際には思い通りにいかないのもマラソンで、その典型は1999年東京です。目標ペース以上で、かつ心拍数も高いにもかかわらず、「今日は行けるぞ!」とそのままレースを進めて、結果的に失速し40kmの関門で失格しました。
その反対に、心拍数を参考にペースアップできた典型例が、ベスト記録で走った1998年別大、練習不足で心配だった2006年ホノルルなどです。これらのレースでは、スタート直後の心拍数や主観的な感覚を総合的に判断し、スタート前に考えていた目標ペースよりもペースアップして走りました。
このようにうまく使いこなせば、心拍数はオーバーペースの見極めやペース配分の指標として使えるのです。ぜひ、心拍数を使ってみてください。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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