jognote 楽しく走ってステップアップ講座
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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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トレーニングはパズルの構築 〜分習法と全習法トップアスリートの心構えとして、「練習でできないことは、試合でもできない」といった話をよく耳にします。
例えば、サッカーの試合でシュートを外した選手が、「シュート練習でも外すのに、ゲームで得点できるはずがない」などと辛辣に論評されることがあります。

パフォーマンスを高めるために、多くのスポーツでは、まず一つ一つの技術を分割・抽出し、それぞれの技術を習得します。その後、得られた技術を試合中でも同じように発揮できるよう、試合形式のトレーニングを導入します。トレーニングの体系として、前者を分習法、後者を全習法と呼びます。
サッカーを例に考えてみましょう。キック、トラップ、パス、シュートなど、それぞれの基本技術の練習が分習法であり、ゲーム形式で行なう練習が全習法となります。
基本技術の劣る選手が、対人でプレッシャーのかかるゲーム中に正確な技術を発揮できないのは無理もない話です。そのため、一般に新たな技術を習得する場合は、分習法から始めます。
しかし、すでに基本技術をマスターして、そのスポーツ本来の楽しみをより享受する目的のためには、全習法から行なう場合もあります。
ランナーにとってのランニングは、それ自体が完結した全習法と言えます。そのため、我々はつい、日々のランニング実績だけで満足しがちです。
レースで記録を出すことだけが、走る価値ではありませんが、もし結果を出したいのなら、日々のランニングで完結するのではなく、パフォーマンス向上に結びつくトレーニングにしていくことが理想です。
そこで、ランニングにおける分習法を考えてみましょう。
レースやタイムトライアルを全習法と考えてみると、レースの要素を距離とペースに分けて、それぞれを目的にした練習を分習法と捉えることができます。ペースを意図したペース走やインターバル走、距離を意図した距離走やLSDなどです。
また、マラソンに必要な能力を要因ごとに抽出し、それぞれを目的にしたトレーニングも、分習法といえます。例えば、最大酸素摂取量を高めるためにインターバル走を行なうこと、脂質代謝の亢進を目的に、早朝にランニングすることなども、分習法と言えるでしょう。
分習法の概念を広くとらえれば、必ずしも走ることだけがトレーニングでないことも理解できます。体幹の筋力の弱い人が体幹を鍛える筋力トレーニングも、ランニングのためのトレーニングになります。
また、心肺機能を高めるためには、走るだけでなく自転車や水泳なども適していることから、自転車などによってトレーニングすることもランニングのための分習法と言えるでしょう。
つまりレースに必要な様々な要素をパズルの1ピースに例えてトレーニングすることが分習法であり、そのパズルを組み立てるトレーニングが全習法であると言えます。
パズルの1ピースが欠けていれば、全体像ができないように、ある能力が劣っていれば、高いパフォーマンスは発揮できないことでしょう。
同じように、ある能力だけが突出していても、全体像は歪み、パフォーマンスの向上には必ずしも結びつかない可能性もあるのです。
したがって、パフォーマンス向上のためには、ある特定のトレーニングだけを突き詰めていくのではなく、構成能力の全体像を考えてまんべんなく行ない、そして逐次、全習法的トレーニングを取り入れることが大切です。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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