jognote 楽しく走ってステップアップ講座
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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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故障時でもLTは改善できる ~クロストレーニングの有効性僕は昨年のホノルルマラソン後に、右下腿の肉離れを発傷し、3週間ほど走れない状況に陥ってしまいました。
痛みなくジョギングできるようになったのは、東京マラソンまであと1ヶ月余りに迫った1月13日です。その日から東京マラソン本番まで、僕が取り組んだトレーニングとその効果を紹介します。
怪我の再発が怖かったため、ランニングの回数、距離、強度をすべて減らしました。
マラソントレーニングとして一般的なペース走は行なわず、この間に行なった長距離走は2度(150分のLSDと21kmのビルドアップ走)だけで、多くは60分程度のジョギングでした。
走行距離でみた直前1ヶ月のトレーニング量は、昨年の東京マラソン前と比べて20%以上も少ない量でした。

その代わりに取組んだのが、ランニングと自転車を組み合わせたクロストレーニングです。具体的には、上記ランニング以外に、週2回の自転車による短時間の高強度インターバルを行ないました。
事前に最大酸素摂取量を測定し、その時の最大負荷で70秒間の自転車運動を、休息(70秒)をはさみオールアウト(回転数が保てなくなる)するまで繰り返すという過酷なものです。
僕は7セットぐらいでオールアウトするのですが、追い込む割には筋のダメージはなく、このあたりがランニングとは大いに異なる点です。ランニングで同様の練習は、出来ないどころか、怪我を再発したことでしょう。
トレーニング前後にランニング時のLT(乳酸性閾値:マラソンペースに相当、第9回コラム参照)を測定しました。
LTを向上させるためのペース走などを行なわなかったにもかかわらず、速度に対する乳酸カーブは図のように右移行し、LTの改善がわかりました。図から、僕のLT速度はおよそ240m/分(4分10秒/km)に相当し、つまりマラソンをこのペースで走りきれることを意味します。
さて、測定データ的には「走れるはず」でも、自信の根拠となるような「走る」練習をしていなかったので、レース本番は正直不安でした。そこで、目標は「前半4分05秒~4分20秒/kmの間で心拍数を基準にペース決定。ゴールタイムは願望で2時間55分、現実的に3時間05分」というアバウトなものとしました。
人ごみが減り、安定して走れるようになった2km過ぎから、心拍計とにらめっこで走り、4分07秒程度が最適とわかりました。ほぼ測定結果どおりです。
とはいっても、今回のトレーニングで1度も経験していない速いペースのため、本当に走りきれるのか半信半疑でレースを進めていました。
結果的に、30kmまではほぼイーブンペースで走ることができ、上限目標に近いタイム(ネットで2時間57分34秒)でゴールすることができました。
さすがに30km以降ガクッと脚に来てペースが低下しましたが、ランニングの練習負荷(量と質)だけから考えると、ありえないほど上々の結果が得られたと思います。これは自転車トレーニングの成果以外のなにものでもありません。
走り込むと怪我をしがちな人、元アスリートで強い負荷をかけられるが、それによるダメージが大きいような人、などには特にトレーニング効果があると思います。心当たりのある方は、ぜひ、1度チャレンジしてみてください。
次回、クロストレーニングの具体例を紹介します。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)