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著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

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箱根駅伝2008観戦記 何が勝負をわけたのか箱根駅伝2008観戦記 何が勝負をわけたのか

史上初めて3大学が途中棄権するというショッキングな幕引きとなった第84回箱根駅伝(2008年)は、早稲田大学の健闘で最後まで勝負がもつれるレースとなりました。

結果的には、優勝候補筆頭の駒澤大学の安定感あるレース運びが際立っていました。同時に、中央学院大学、山梨学院大学、帝京大学、そして関東学連選抜の大健闘は、これまでの箱根駅伝とは異なる風を起こしたように思います。

健闘した予選会勝ち上がり組

ジョギング

これら3大学と学連選抜は、予選会から勝ちあがったチームです。今回の予選会は、2007年10月20日(土)に20kmレースで行なわれました。

本戦出場権を得るために、各大学は予選会に一旦ピークをあわせたはずです。20km超のレースにおいて、2ヶ月ちょっとの間隔で再びピークを作るのは至難の業です。そのため、これまでは予選会突破チームが上位に入るのは困難でした。

昨年優勝の順天堂大、優勝候補の東海大などの棄権があったとはいえ、終始上位を走った中央学院大、山梨学院大、関東学連選抜の3チームは、それらのアクシデントがなかったとしてもシード権を獲得したことでしょう。

予選会の捉え方、本戦までのトレーニングの流れが良かったことが勝因の一つであることは間違いありません。今後も、シードチームがダイナミックに入れ替わるような駅伝になると面白いと思います。

駅伝のセオリーと箱根の特色

健闘したもう一つの要因は、駅伝のセオリーである先手必勝のレース展開を実践できたことです。絶対的なエースを擁した山梨学院大と中央学院大は2区で上位に上がり、その後もキープしました。

一方、関東学連選抜は各選手がほとんどブレーキせず、加えて山(上り、下り)で躍進しました。昨今の箱根出場チームの選手のレベル差は大差なくなり、一区間で数分の逆転劇はブレーキでもない限りまれです。しかし、箱根の特徴である山上りは、他の区間に比べ個々のタイム差が格段に大きくなります。早稲田の躍進も山でした。

駅伝では、追う側の負担は並大抵ではなく、1分以上あくと前はほとんど見えません。その状況で、冷静に自分のレースを進め、オーバーペースにならないぎりぎりのペースで前を追わねばなりません。

往路復路ともに前半を重視すること、そして山で貯金を稼ぐことが箱根で勝ち抜くセオリーでしょう。

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箱根駅伝の存在感

それに対して、強豪校の棄権は非常に残念でした。ここ数年、少なくなってはいたものの、箱根での棄権は、選手にはもちろん、見る側にも強く心に残ってしまいます。

長い競技者人生の一通過レースと捉えられればいいのですが、学生にとっては、一期一会の大会なのでしょう。箱根駅伝が独特の存在感を放ち、選手や関係者が、まさに箱根を中心に生活をおくっているのが現状で、過大なストレスであることは容易に想像がつきます。

スポーツを観る側の成熟

箱根駅伝がこれほど注目を集めるようになったのは、ひとえにTV放送の影響です。先回のコラムでも述べたように、駅伝は、個人レース以上に浮き沈みの多いレース展開となりがちです。棄権やブレーキは、もちろん伝えるべき重要な要素ではありますが、それを「ドラマ仕立て」に実況したり追っかけたりすることなく、競技としてのレースを淡々と伝えて欲しいと思います。

そしてわれわれ視聴者も、アクシデントに過度の関心を払わず、駅伝そのものの面白さと難しさを理解した上で、若い学生競技者たちを、息子や近所の若者を見守るような気持ちで、温かくさわやかに応援したいものです。

(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)

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