jognote 楽しく走ってステップアップ講座
jognote 楽しく走ってステップアップ講座
著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
ジョグノートモバイル
バックナンバー
クロストレーニング 怪我予防にも効果あり
僕の研究室の大学院生が、ランニングにおける自転車トレーニングの有効性について研究を進めています。もう少しなじみある言葉で言うと、「クロストレーニングの有効性」になります。
クロストレーニングとは、「専門とするスポーツの競技力向上のために、その他のスポーツあるいはトレーニングを行なうこと」と定義されています。ランナーの場合は、自転車運動(バイク)や水泳(スイム)などランニング以外の運動を行なうことがクロストレーニングとなります。
クロストレーニングの効果として、もっとも理解されやすいのは、障害の予防、傷害からのリハビリテーション、心理的休息効果などが挙げられます。われわれの研究も、トレーニングによる怪我の防止にその端緒があります。
さらに、研究を進めていくなかで、単に障害予防やリハビリ目的以上に、クロストレーニングが有効である可能性も見えてきました。このあたりについては次回以降に紹介することとし、今回は怪我(の予防)とクロストレーニングについて焦点を絞ります。
まず日本の競技ランナーの怪我とクロストレーニングの現状を調査しました。調査対象は、トップレベルを含む実業団と大学の長距離選手167名です。
その結果、過去1年以内に、1週間以上ランニングを中断するような怪我をしたランナーは半数近く(47.3%)に上りました。
一方、クロストレーニングの意義を理解しているランナーは、1割程度にとどまりました。そのため、故障をしていない通常時のランニング以外のトレーニングとして導入しているのは、補強的な筋力トレーニングがせいぜいで、バイクやスイムをクロストレーニングとして用いているランナーは、15%程度にすぎませんでした。
1980年代前半に大活躍した男子マラソンのA・サラザール選手(アメリカ)がスイム・トレーニング、女子マラソンの新旧世界記録保持者であるI・クリスチャンセン選手(ノルウェー)やP・ラドクリフ選手(イギリス)がクロスカントリー・スキーを導入していたのはよく知られています。
また、シドニー五輪5000m銀メダリストのS・オサリバン選手(アイルランド)は、妊娠から出産時にかけてバイク・トレーニングに取り組み、産後わずか3~4ヶ月で世界トップレベルまで復活を果たしています。
サラザール選手は、膝の障害の経験から障害予防のために走行距離を極端に減らし、その代わりスイムやバイクを用いて全身持久力の維持、脂質代謝の高進につとめていたようです。
クロスカントリー・スキーは、ランニング時の着地衝撃がない分、膝などの障害のリスクが減ります。また、姿勢の維持、腕の力を必要とし、ランニング以上に全身運動となります。
積雪の多い国・地域の選手は、冬季トレーニングとして積極的にクロスカントリー・スキーを用いています。これは、怪我の予防はもとより、全身の持久力を高めるためにも行なわれているのだと考えられます。
このように、世界のトップランナーは、日本のランナーよりも、能動的にクロストレーニングを用いています。かくいう僕自身は・・・、週に3回程、通勤として約30分の「全力」自転車運動を実施しています。
特に怪我でお悩みの方は、ただがむしゃらに走るだけでなく、「怪我をしないために」スイムやバイクなど、クロストレーニングを導入してみてはいかがでしょうか。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
関連講座