jognote 楽しく走ってステップアップ講座
jognote 楽しく走ってステップアップ講座
著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
ジョグノートモバイル
バックナンバー
夏本番!安全なトレーニングのために夏のランニングの厳しさは、多くの方が実感していることでしょう。
記憶にある方もいるかと思いますが、1995年9月3日、福岡で行なわれたユニバーシアード大会のマラソンは、まさに「灼熱地獄」でした。39kmまでトップを独走していた鯉川選手が、意識や判断力を失い、フラフラと蛇行しながら、ついには何度も転んでは走ろうとする映像は、ショッキングなものでした。
幸い命に別状はありませんでしたが、一歩間違えれば、と思うとゾッとします。当日の気象条件は、気温29度、湿度90%と、気温以上に湿度が原因の過酷なサバイバルレースとなったようです。
レースでなくとも、夏のトレーニングは危険と隣り合わせです。僕の経験では、競技レベルの高い人ほど、そして女性ほど、意識を失うほどにまで追い込んでしまう傾向があるように思います。
高温環境下で起こる熱中症は、4つの症状に分類できます。
| 原因 | 症状 |
| 血管拡張 | 血圧低下による熱失神 |
| 脱水 | 倦怠感や吐き気、頭痛などの熱疲労 |
| 大量発汗 | 塩分濃度低下による熱痙攣 |
| 体温上昇 | 中枢機能麻痺を起す熱射病 |
特に熱射病は命の危険に関わる重篤な状態です。

これらを防ぐためには、水分補給が重要です。15~20分おきに200ml程度を給水することによって体温の急上昇を抑えられることがわかっています。
夏のトレーニング時には、ドリンクを準備するか、途中で水分を補給できるコースを選択し、のどの渇きを目安にするのではなく、「20分ごと」など給水の時間を決めておきましょう。
走っていて、普段と違う身体の重さやだるさを感じたときは要注意です。 トレーニングの開始前に少し多めのドリンクを摂取しておくことも大切です。
大量の発汗時には、塩分も同時に失われます。このとき、水だけを飲むと血液の塩分濃度が下がってしまうため、その防衛反応としてそれ以上水が欲しくなくなり、(結果として)発汗量に見合った水分が補給できません。
その結果、体液の回復が不可能となり、運動能力が下がるばかりか、熱中症の原因にもなります。したがって、スポーツドリンクの方が適していると言えます。
実際のランニング中にスポーツドリンクをそのまま飲むと、非常に甘く(濃く)感じ、ついつい薄めて飲みたくなります。しかし、薄めてしまうと効果は半減してしまいます。
最近は、種類も増えたので、トレーニング中にいろいろ試して、自分にあったドリンクを見つけておくのがよいと思います。
脱水が身体に及ぼす影響を下表にまとめました。3%程度の脱水は、夏場ならすぐに起こりえますし、ちょっと距離走でもやろうものなら、5%程度の体重減はざらです。
しかし、そのような脱水は、危険と隣り合わせであることを十分に認識した上で、夏のトレーニングを安全に行ないましょう。
| 体重減少率 | 体重60kgの場合の減少量 | 危険性 |
| 3% ~ | 1.8kg ~ | 体温調節能力の低下 ⇒ 運動能力の低下 |
| 4 ~ 6% | 2.4 ~ 3.6kg | 血液の濃縮、心拍数、呼吸数、体温上昇、のどの渇き |
| 5 ~ 10% | 3.0 ~ 6.0kg | 熱疲労、精神機能の低下 |
| 15 ~ 20% | 9.0 ~ 12.0kg | 循環不全で昏睡 ⇒ 死亡 |
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)