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著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

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最大酸素摂取量を高めるトレーニング最大酸素摂取量を高めるトレーニング

ジョギング

最大酸素摂取量を規定する要因は多数あります。酸素が運搬される経路を順に追うと、
①呼吸により肺へ空気を取り込み、
②肺胞毛細血管で酸素が血液へとけ込み、
③酸素を含んだ血液が肺静脈を経て心臓へ戻り、
④心臓から全身へ血液が駆出され、
⑤筋肉などの各組織で酸素が取り込まれます。

したがって、酸素獲得のためには呼吸機能、血液性状(ヘモグロビンや赤血球)、心・循環機能、筋の機能などの協調が重要であり、その結果が最大酸素摂取量として現れます。

運動時の呼吸機能

一呼吸で肺に取り込まれる空気を一回換気量、1分間値を換気量と呼びます。

運動を始めると一回換気量、呼吸数ともに増え、換気量が増大します。これは酸素利用が増え、血中の酸素分圧の低下及び二酸化炭素分圧の上昇が起こり、この変化を化学受容器が感知して呼吸が活発になるからです。

最大時の呼吸数は60~70回、換気量は男性で100(女性で70)ℓ以上にも達します。大きな最大換気量には、強く、かつ速い呼吸が求められるため、その改善にはインターバル走のような高強度の運動が必要です。

運動時の心拍出量

心臓の一拍動で全身へ駆出する血液量を一回拍出量、1分間の積算値を心拍出量と言います。

運動時には一回拍出量、心拍数ともに増加して、心拍出量の増大に貢献します。強度に比例する心拍数に対して、一回拍出量は中等度の強度までは増加し、それ以上強度が増してもあまり変化しません。

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心拍出量のトレーニング効果

ランナーは、トレーニングをしていない人に比べて安静時や同じ速度で走る際の心拍数が少なくなります。これは一回拍出量が大きいため、少ない心拍数でも心拍出量を維持できることに起因します。

一方、心拍数が最大に達するような最大疾走になれば、一回拍出量が大きいため、心拍出量は高くなります。これがランナーの最大酸素摂取量が大きく、結果としてより速く走れる要因です。

ランナーの一回拍出量が大きい理由は、主に心臓が肥大して心容積が大きい形態要因と、心筋の収縮性及び拡張性が優れている機能要因によります。その他に、血管の弾力性が富み血圧が低いことなども関係しています。

一回拍出量は中等度以上の運動で増加しなくなるため、心機能の改善には、ジョギングなど強度の低いトレーニングでも十分に効果があります。

筋の機能

酸素摂取量に関わる筋の機能として、酸素を筋の隅々まで運搬する毛細血管網の発達と、酸素を利用するためのミトコンドリアの機能改善(と量的発達)が欠かせません。これらは、強度の低い長時間運動によって発達することが知られ、LSDや距離走などは、その効果的なトレーニング法です。

一方、最近の遺伝子研究によって、毛細血管の増殖やミトコンドリアの機能亢進のために、長時間運動だけではなく、短時間の高強度インターバルも有効であることがわかってきました。

最大酸素摂取量向上のためのトレーニング

高地トレーニングは、低酸素(低圧)状態に身体を暴露することによって、ヘモグロビン濃度の改善や筋の機能改善などを図り、最大酸素摂取量の向上を目指したトレーニングです。

一方、貧血は酸素を運搬するヘモグロビン濃度の減少した状態をさし、酸素運搬能力を著しく低下させます。その意味で、貧血時のトレーニングは高地で行なうトレーニングと似ています。しかし、健康を害しては本末転倒です。まずは貧血を治癒し、それから少しずつ負荷をかけてゆきましょう。

したがって、最大酸素摂取量を高めるためには、まずはゆっくりとしたジョギングやLSDなどで、筋の毛細血管密度やミトコンドリアの機能改善、心機能の改善を図り、運動に慣れてきたら、強度の高い運動を取り入れ、呼吸、心機能、筋機能を改善するのが効果的です。初心者や休養明けのトレーニングでも心がけたいメソッドです。

(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)

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