楽しく走ってステップアップ

今年こそジョギングをはじめよう!ジョグノートなら記録管理もカンタン

著者紹介

鍋倉賢治

鍋倉賢治

1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。

現在、筑波大学体育系(体育センター)教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。

モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。

走るなら食べよう!~体は必ず変わります~

バックナンバー

最新講座


福岡国際マラソン観戦記

福岡国際マラソンの川内選手の走りに触れ、時間の経過とともにいろいろな思いを抱きました。久しぶりのコラムになりますが、率直に記してみたいと思います。

奇跡的な走り

福岡のレース前、彼の怪我が伝えられ、直前のレースでゆっくりしか走れない様子が報道されていました。福岡の前々日には捻挫があったことも知りました。正直「今回は、例えスタートしたとしてもまともに走り切れないだろう」と思っていました。それでも、彼の走りには人を引き付ける力があります。ペースメーカーが離脱し、多くの日本選手が脱落した最もきつい25㎞以降、自ら主導していくレース展開には心を打たれました。

ジョギング

この時点で顔をしかめ鬼気迫る姿から、あの状態であそこまで頑張れるのか、という畏敬の念にも似た思いがこみ上げてきました。このまますんなりいくとは思えない危なっかしさと、それでも頑張る姿が、最後まで目を離せない理由の一つです。いつ失速してしまうのか、ひやひや見ていた僕の気持ちも、レースが進むにつれ純粋な応援に変わっていきました。解説の瀬古利彦さんのコメントと重なりますが、当日の彼のコンディションからして、120%の成果だったと思います。

日本マラソン界の課題

一方、彼の頑張りの結果、日本の長距離・マラソン界が抱える課題を改めて突き付けられた気がします。他の招待選手が振るわなかったことも残念でしたが、そもそも世界選手権の代表選考レースにもかかわらず、福岡国際マラソンは、有力ランナー、それも将来を嘱望される若いスピードランナーが出場しづらい大会なのです。元日のニューイヤー駅伝を控えているので、駅伝を重視するチーム事情から、有望な選手ほど福岡への参加を避けざるを得ないのでしょう。抜本的な解決策を考えなければならない重い課題です。

後半を読む

トップランナーとして

当日は感心しながら応援していたのですが、しばらく経ち冷静になると川内選手の出場は本当に良かったのか?というレース前から抱いていた気持ちが、再燃してきました。市民ランナーには、自分の意思でレースを選び、走りたいように走る自由があります。市民ランナーを自任する川内選手ですから、その挑戦を外野がとやかく言える筋合いはないのかもしれません。一方、今の川内選手は一市民ランナーを超えた存在で、大きな影響力を持ったトップアスリートの一人です。報道によると、招待されたからには出場するのが責務である、と彼は考えていたそうで、まじめな川内選手らしい人柄が分かります。確かに川内選手を応援したい人はたくさんいることでしょう。さらに今回、例え途中で怪我の再発などのアクシデントが起こっていたとしても、彼は必死にゴールを目指したでしょうし、そしてその姿に感動する人々もいたことでしょう。しかし、トップアスリートに求められることは、そういったものなのでしょうか?

次回こそ、ベストな状態で

事前のアクシデントと今回の結果から、川内選手のポテンシャルの高さを再認識しました。怪我や体調不良がなければ、2時間7分台、6分台を狙える一人である、と改めて思うのです。その点で言えば、怪我を受け入れ、彼が責任を感じていた主催者や応援する人々に潔く謝って欠場し、きちんとした最高のコンディションを作ってから走って欲しかったと、終わった後だからこそ思います。無理をして走った代償として、新たな怪我をこうむっていないことを願います。

もっとも川内選手のことですから、次のレースでアッと驚く走りを見せてくれるかもしれません。そうであれば良いなと、低迷している日本のマラソン界をリードしていくことも彼に求められる役割だと思います。

(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)

前半を読む

関連講座

前の講座