楽しく走ってステップアップ
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著者紹介
鍋倉賢治
1963年生まれ。1991年 筑波大学大学院博士課程体育科学研究科修了・教育学博士。
現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科(体育センター)・准教授 ランニング学会常務理事を務める。専門は健康体力学、マラソン学。
モットーは「楽しく追い込む」。マラソンベスト記録は2時間29分09秒。
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体重が減れば記録は早くなる?
善し悪しは別にして、体重を気にしているランナーは多いことと思います。そもそも走り始めた動機が減量のためという方もいるでしょう。
過日、ランニング学会(2012年3月18日)において脂質代謝をテーマにしたシンポジウムを開催しました。ランナーにとって脂質代謝の意義は、次の2点に集約できます。すなわち、減量などの体重の管理と糖の節約によるパフォーマンスの向上です。そこで、僕が発表のために検討した内容について、体重の話と脂質代謝の話に分けて紹介します。今回は、体重とマラソンの記録の関係です。
以前のコラムで僕自身の減量について連載しましたが、僕の身体には体重変動が大きいという特徴があります。そこで、体重とマラソンの記録の関係を図にしたところ、全体的には体重の軽い方がマラソンの記録が良くなるという、多くの皆さんが既にご存じの関係が得られました(図1)。
これを、30代(29歳時の初レースを含む)と40代のレースで分けると、さらに面白いことがわかります(図2)。
30代では体重とマラソンの記録には明確な関係が認められないのですが、40代になると両者の関係が強くなりました。そしてその傾きからは、体重が1kg減ると記録は約9分短縮されることが推定できます。
マラソンの記録と体重の関係には、「1kg減ると3分短縮する」などの言説があります。この根拠となるのが体重とエネルギー消費量の関係です。体重減少(軽量化)によって省エネとなるので、同じエネルギーを使えばより速く走れる、という論理です。
実際には、元の体重の大小によって記録に影響する割合は異なるのですが、大まかに言えば「1kg減で3分程度の短縮」という関係性は得られることになります。ところが僕の結果では、30代では体重と記録に関係がなく、40代では3分どころか、9分/kgも短縮する結果となりました。
30代の頃の記録には、単に体重とエネルギー消費量だけではなく、様々な要因が関与したものと分析できます。例えば、マラソンの戦術的な成否(ペース配分など)が考えられます。大失敗した初マラソン(体重は一番軽かった)などは、持っている能力を十分に生かしたとは言えません。また、強いトレーニングの結果、筋量は増えますが、これは省エネの観点ではマイナスでも、推進力を生みだすという観点ではプラスになります。
一方40代では、戦術的に成熟するためマラソンの記録は持久性体力(乳酸性閾値や最大酸素摂取量)に左右されます。そしておそらく体重の変動も、トレーニング量によって増減する脂肪の量に依存します。すなわち、充実したトレーニングができた時は持久力はより向上され、さらに体重(脂肪)の減少量も大きく、この体重減と体力向上の相乗効果で、「1kg減で9分短縮」という大きな効果を生み出したものと考えられます。
まとめると、始めて数年の頃は、走るたびに記録を伸ばすことも考えられ、あまり体重と記録の関係性は得られないかもしれません。しかし、元々運動経験がなく、やや体重の重かった人にとっては、ランニング歴と共に体重も減少し、マラソンの戦術的能力も向上するため、記録は3分/kgという関係以上に短縮されるかもしれません。
ここで大切なのは、減量=記録更新ではなく、トレーニングによって体力や筋力などの向上があり、それにプラスして体重も減少するため、結果として記録が短縮されるということです。皆さんも、ご自身の体重と記録の関係を求めておくと、コンディションの目安にもなり面白いと思います。
(文:鍋倉賢治 イラスト:後藤徳一郎)
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